この記事から理解してほしいこと
- 当直中に看護師さんがコールして来たら、ほとんどの場合すぐに診察してほしい
- 看護師さんからのコールの対応がきついと、患者の状態が悪くなってから呼ばれる可能性があがる
- 看護師さんの報告方法”SBAR”を知っておく
おはようございます、こんにちは、こんばんは。
じおーた(Twitter@JiotaQq8888)です。














このやり取りを見た医学生や研修医の方々は、「すぐに診察に行ったらいいじゃん!」って思う人がほとんどだと思います。
声を大にして言いますが、その気持ち、忘れないでください!
本日は、看護師さんへの勉強会で最も多くいただいた質問のお話をします。
僕なりの質問への回答と看護師さんの考え方、看護師さんのニーズに応えないとどういう事態になるかをまとめます。
ということで始めます。
本日の目次(タップすると飛ぶよ)
看護師さんが困ってます!
冒頭にも書きましたが、急変対応の勉強会をしたときに、一番多くされた質問が次の質問です。
「当直中に医師にコールをしても、なかなか診察に来てくれません。どうしたら来てくれるようになるでしょうか?」
私の回答をまとめてみました。
質問の回答
- 電話の冒頭で用件の結論を言う
- ”SBAR”で報告するなら、最後に「すぐに診察にきてください」と言う
- 夜勤なら、当直医にあらかじめ挨拶するなど当直帯開始時からコミュニケーションを取っておく
回答の詳細を書く前に、医師側の考え方と”SBAR”について解説します。

医師側の事情
医師年数があがってくると、日頃の業務も多くなり、なかなかすぐに動けないときもあります。
当直の日も普通に朝から働いて、当直が明けても朝から外来や検査、外勤が待っていると考えたら、「起こされたくない、ベッドから出て診察に行きたくない」「診察に行かずに電話で済ませられないかな」と邪な気持ちが芽生えるのは当然なのかもしれません。

医師に伝えたいこと
看護師さんからのコールで診察依頼があったら、怒らず、嫌な顔をせずに診察に行きましょう。
普段から一緒に働いている医師なら、看護師さんも(できれば起こしたくない)と思っているはずです。
思っていても呼ばなければいけない事態が発生しているからコールが来ているのだと認識しましょう。
理由をつけて行かなかったり、行っても怒鳴ったり嫌みを言うと、看護師さんからの信頼を失います。
看護師さんの信頼を失うと、もっと重大な事態を招く危険度があがります。

重大な事態になった実例
夜中にコールすると怒鳴ることで有名な安栗(仮名)先生が当直でした。
夜勤の担当ナースは、本来なら報告する事態でしたが、「一時的なことかな、今日はコールすると怒鳴られるし、何事もないことを祈って経過観察しよ。」と思って、当直医に報告せず経過観察することを決めました。
1時間後、巡回に行くと、冷汗をかいて、はぁはぁぜぇぜぇ行っている患者さんを目にして慌てて当直医にコールしました。
「なんでこんになるまでコールしなかったんだぁ!」
普段から怒鳴りまくっていると、急変の前段階であるはずのコールがなくなり、本当にやばくなってからコールが来ると言う実例です。
「普段から急変のコールしか来ない」って嘆いているお医者さん、自分に思い当たる節ないですか?

”SBAR”という報告方法
SBARの概要
”SBAR”は緊急時、簡潔に、でも漏れなく報告を行うためのツールです。
急変時の報告が苦手っていう看護師さんが多いことから米国発で普及しました。
SBAR
- S(Situation):状況
- B(Background):背景
- A(Assessment):評価
- R(Recommendation):提案
それぞれの頭文字をとって”SBAR”です。
SとBが「客観」、AとRが「主観」であることを強く意識しましょう。
SBARの具体例
S(Situation):状況
今まさに起こっている状況で、一番最初に伝えるべきことです。
「〇〇さんがショックになっています。」
「××さんが呼吸困難を訴えて、SpO2が90%まで低下しています。」 など
B(Background):背景
次に、その患者さんの背景を伝えます。
どんな患者さんにSの状況が起こっているかで、医師は考えることが変わってくるからです。
現在精査中の症状や治療している疾患名、内服状況や点滴状況を簡潔に伝えましょう。
「〇〇さんは、胸痛精査で昨日入院してきました。」
「××さんは、SLEが基礎疾患にあり、ステロイド内服中です。」
「△△さんは、末期腎不全で血液透析中です。」 など
A(Assessment):評価
自分自身が考えたこと、感じたことを伝えます。
「自分は急性心筋梗塞を起こしている可能性を考えています。」
「原因はわかりませんが、呼吸状態が急激に悪くなっています。」 など
R(Recommendation):提案
自分からの提案を伝えます。
何を提案していいかわからないという最悪の状況なら迷わず
「すぐに来てください!」でも構いません。
これも提案なので、迷わず伝えましょう。
それ以外では
「ルートを確保しておきます。」
「酸素投与を2Lで開始します。」 など
回答の詳細
電話の冒頭で用件の結論を言う
ここからは私個人の意見ですが、できる看護師さんはこんなことしてくれてました。
真夜中の電話では、最初に用件を伝えてくれました。
「じおーた先生、診察ではなくて、少し相談に乗ってほしいことがあります。」
これは起きて診察に来なくてもいいけど、電話で指示をくださいってことですね。
「診察してもらうかどうかは迷う程度なんですけど、報告があります。」
こちらは、(診察に来るかどうかは先生が判断してほしい)というメッセージがあるので、話を聞きながら診察に行くかどうか考えることができます。
この一言がないまま、長々と報告されて「結局、診察いらんのかーい」ってなると、まぁ大事にはならなくていいんですけど、ちょっとズコってなりますよね?
診察がいらない、もしくは診察するかどうかは医師に判断してもらいたいなら、その旨を1言目で伝えてくれると医師は心に余裕ができます!
最初に結論を持ってくるというのはPREP法と同じですね。PREP法に関してはこちらの記事も参照してください。
-
-
【第14回】効果的な伝え方
続きを見る
-
-
【学生も教官も必見!】講義・授業でわかりやすいスライドを作るコツ3つ
続きを見る
すぐに診察してほしい状況だった場合、「すぐに診察にきてください」と1言目に言うべきなんでしょうか?
これは、言わなくても必然的にそうなる状況なら言わなくても大丈夫です。
なぜなら、最初に伝えられた状況が心肺停止やショック、呼吸不全なら間違いなく医師はダッシュします。
最後に「すぐに診察に来てください」と言う
SBARのSの段階で、医師が(すぐにダッシュしなければ)と思うキーワードがない場合、医師は来ない可能性があります(個人差があります)。
なので、念押しも含めて、最後に自分がしてほしいことを提案するのです。
上述したPREP法でも最後のPでもう一度結論を伝えています。
もし、最後に「すぐに診察に来てください」と伝えて、「わかっとるわ、ボケっ」って言われたら広い心で許してあげてください。
医師がすぐに診察にくるという目的が達成されるんですから。
そして患者さんの状態が安定した後で、冗談っぽく「さっきの発言パワハラですよ」と伝えましょう。
どんなに腹が立っても患者を前に喧嘩なんか始めちゃいけませんよ。
あらかじめコミュニケーションを取っておく
当直に入るときに、当直医に「〇〇先生、何かあったらコールするので、お願いしますね。」と笑顔で伝えておくだけでも効果あります。
ポイントとしては、名前を呼ぶことと笑顔です。
この2つは誰しも意識することなので効果があります。
普段からコミュニケーション良好な場合は問題ありませんが、それでも伝えておくほうがいいでしょう。

コラム~看護師さんから実際聞いたこわ~い話~
コラム
看護師さんから「夜勤のとき、当直医にコールしてもなかなか診察に来てくれなくて困っている。」と相談されたとき、何を言っているのか理解できませんでした。
自分の中では、「当直で呼ばれたら診察に行くものだ」というのが当たり前だったからです。
大学病院時代に一緒に働いていた看護師さんから言われたのが次のことです。
- 看護師さんたちは、コールしやすい医師が当直医の場合は、その日の夜勤メンバーは自分の判断だけでコールしている。
- コールすると不機嫌になる医師が当直の場合、まず先輩看護師やリーダー看護師に「当直医にコールした方がいいかどうか」相談している。そして、なるべくコールせずに済む方法を考えている。
- コールしやすい医師のときは、夜勤のストレスがかなり減るし、安心して夜勤できる。
- コールしにくい医師の時は、ひたすら何も起きないことを祈っている。
この話を聞いてぞっとしませんか?
看護師さんたちの夜の緊急カンファレンス、内容は医師が聞いてはいけない話なのではと背筋に冷たいものが流れました。
普段から怒ってばかりいると、患者の状態が悪くなるまで粘られてしまう可能性があがります。
当直中、自分の目となって夜勤してくれている看護師さんを大切にしましょうね!
続編:「さかなさんの日記」ブログでこの記事の続きを書いてくれました!
2022年6月2日、私じおーたの誕生日にブロガー仲間であるさかなさんがこの記事の続編を書いてくれました。
「#さかなさんと誕生日を祝い隊」という企画でさかなさんが色々なブロガー仲間も記事を書いてくれる企画なんですが、その企画にじおーたも見事選ばれまして・・・。
本記事は、「看護師さんからのコールを嫌な顔せずちゃんと対応しましょうね」という医師向けの記事でして、その続きとしてこうやって対応すると看護師さんにモテまくってウハウハ仕事がしやすくなりますよ!ということがわかります。
ということで看護師さんにモテまくりたい医師は続きの記事もぜひ読んでくださいね♪
看護師にモテまくる一言トップ5を紹介しちゃうぞ!
まとめ
急変対応の勉強会で、看護師さんから最も多くいただいた質問、
「すぐに診察に来てほしいのになかなか医師が来てくれません。どうしたら来てくれるようになりますか?」
に回答いたしました。
報告するときに、一言目に患者の状態が急変していることを伝えるか、最後の提案で「すぐに診察に来てください」と伝えるのが結論です。
医師でこの記事を読んだ方は、看護師さんの裏側の事情も考慮して、診察に行きましょう。
「百聞は一見に如かず」看護師さんがどんなにがんばって伝えてくれても、伝聞よりは自分の目で見たほうが早いことがほとんどです。
では。

”踊る大捜査線MOVIE”見てない人はぜひ見てね!
\prime videoから無料で見ることができるよ/