救急医のリアル

【医師の経歴2】なぜ腎臓内科を選んだの?救急には活かせるの?

スポンサーサイト

おはようございます、こんにちは、こんばんは。

じおーた(Twitter@JiotaQq8888)です。

めでぃなさん
じおーた先生は研修医から忙しく働いていたんですね。ところで、腎臓内科と救急の接点ってあまり思いつかないです。
じおーた
救急と関連しない専門科ってないと思うけど、腎臓内科は確かにあまり救急のイメージがある科じゃないよね。そのあたりを今日は話していこうか。

ということで、始めていきます。

 

腎臓を専攻

腎臓内科を選んだ理由

大学院入学に際して、勤務先も大学病院の腎臓内科に移ることになりました。初期臨床研修以来の母校の大学病院勤務です。

医師6年目で大学院に入学して大学に戻ったんですけど、医学生から2番目に多かった質問はこれでした。

めでぃなさん
じおーた先生はなぜ大学で腎臓内科を専攻したんですか?

ズバリ!結論から書きます。

理由

  1. 腎臓内科医は全国でも少なく、地方ではさらに少ない
  2. 透析を含む血液浄化療法は武器
  3. 幅広い分野とコラボレーションできる
  4. 高血圧、糖尿病と関連が深い
  5. 夜間の呼び出しが少ない

腎臓内科医は少ない

日本専門医制評価・認定機構の調べによると2013年8月時点での日本国内の専門医数は下図のとおりです。

さらに、私が勤務していた県では腎臓内科医はかなり少なく、地域の中核病院でも常勤の腎臓内科医がいない病院も多くありました。

人がいなければ、自分に成長できる機会が多く回ってくるだろうと考えた部分が大きかったです。のちに、人が少ないということは、下積み生活も長くなると気付かされることになりましたが・・・。

医師6年目、7年目と腎臓内科の中で一番下でしたし、上司も3人しかおらず、2週間すべて待機か当直という過酷スケジュールでした。腎臓内科に加え、総合内科の症例も担当していましたので、病棟のほぼ半分が自分の担当患者になるという過酷貴重な経験も積ませていただきました。
読者のみなさんはどう捉えるかわかりませんが、これも捉え方によると思います。
私は、後から振り返ると、多くの症例を担当できたおかげで学会発表や論文での症例報告もたくさんすることができたとPositiveにとらえております。もちろん、実際働いていた時は睡魔と空腹に襲われながら、気力を振り絞って働いてたので、negativeな面もありました。

あと、「極々、極めて、ほんの、少しだけ」邪な考えとして、専攻する医師が少ない=出来が悪くても職にあぶれることはない=くいっぱぐれない と考えた部分もあります。

武器

透析と聞くだけで、苦手意識を持たれる他科の医師も実は多くいるんじゃないかなと思っております(推測です)。

他人があまり得意でないことは得意な人にとっては大いに武器になります。

後述しますが、血液浄化療法は様々な分野に関わった治療法です。今後の血液浄化療法の発展は可能性が高いんじゃないかと考えていました。

循環器内科に心臓カテーテル検査・治療があるように、消化器内科に内視鏡があるように、腎臓内科には血液浄化療法があるじゃないか!

体液管理や急性腎障害、敗血症性ショック、電解質異常や薬物中毒で慌てず血液浄化できるのは非常に大きい武器になります。

透析患者の対応ができる=働き口が広がるのも、今だからわかるメリットです。

幅広い分野とのコラボレーション

腎臓は発生の段階で中胚葉から分化する臓器です。中胚葉から分化する臓器で主なものは心臓や血管があります。ですから腎臓は循環器系の臓器と深い関係があると考えられます。体液量管理は循環器系でも腎臓系でも必要となる治療ですし、腎疾患の患者さんの2大死因は心血管疾患か感染症です。

また腎臓はホルモンを出す臓器ですから内分泌系とも関連がありますし、膠原病や多発性骨髄腫など血液疾患とも関連があります。

血液浄化療法では肝疾患、神経疾患、炎症性腸疾患、移植前後、感染症(敗血症)など幅広い分野に対して治療法があります。

腎疾患を患っている若い女性の妊娠や妊娠高血圧症候群などで産科とコラボレーションする場合もあります。

唯一、悪性腫瘍だけは関連がないかと思いきや(腎・尿路系の悪性腫瘍は腎泌尿器外科の範疇)、Oncpnephrologyという概念ができたため、悪性腫瘍にも携わるようになりました。

近年では、腎移植も進んできており、移植医療に携わる機会も増えてきています。

決して主役になる科ではないけど、縁の下の力持ち的存在で力を発揮していける科ですから、周囲からも重宝されます(と信じたい)。

高血圧・糖尿病との関連

2016年、2017年の厚生労働省の調査をもとに推計すると高血圧患者、糖尿病患者ともに約1000万人程度いると言われています(重複している人も含まれると思います)。

日本で腎代替療法(透析や移植)の原因となる疾患1位は糖尿病で、腎代替療法患者のほぼ2人に1人が糖尿病が原因です。3位は高血圧に起因する腎硬化症です。

腎臓が悪くなるから血圧が高くなるのか、血圧が高いから腎臓が悪くなるのか、はっきりとわからないケースも含まれると思いますが、いずれにせよ高血圧と腎疾患は関連が深いものということは間違いありません。

内科医(もしかすると全医師に求められるのかもしれません)をするうえで、この2つの疾患を診療することは欠かせないのです。

この2つの疾患の管理ができない=患者が透析や移植をしなければいけなくなる ことと同義だと私は考えますので、現代日本において重要な2疾患を診療できるようになるメリットがあると考えています。

夜間の呼び出しが少ない

後期研修医のときは循環器内科での緊急も呼び出される日々でした。心臓カテーテル検査は嫌いよりはむしろ好きなほうでしたし、救急対応するのも問題なくこなしておりました。しかし、これを50歳になっても急性心筋梗塞が3晩続けてきたら夜中2時の緊急呼び出しを喜んでできるだろうか?と考えたとき、「できる!」と確信をもつことができませんでした。

大学病院のような腎移植を手掛ける病院は緊急呼び出しが全くないとはいきませんが、それでも緊急を要する処置はさほど多くない科だと思います。同じ内科でも循環器内科、消化器内科と比べると圧倒的に少ないと思います。

救急へ転向の良かった点(私見)

注:あくまで個人的な意見です!

救急はもともとの専門科から転向した先生も多く、それぞれがその得意分野を共有しながら診療にあたっている施設も多いと思います。そのもともとの専門家が腎臓内科という医師はほとんど見かけません。腎臓内科から救急へ転向するのは、2021年時点では希少価値が高いといえます。その中でさらに詳細に良かった点を挙げていきます。

良かった点

  1. 血液ガス
  2. 尿検査
  3. 透析患者の救急対応
  4. 静脈路確保、CVC挿入
  5. 薬物中毒

血液ガス

血液ガスの読解が得意なのは最も役立ちました。

血液ガス分析は、救急外来で病態把握するのに最も早く結果がわかる検査の1つです。

酸塩基平衡異常、電解質異常の対応は、苦手な医師も多いでしょう。結果によって第一印象や見た目より重症かもしれないと注意できます。

尿検査

尿検査は、少しマニアックな検査ですが、理解していると救急外来でも役立ちます。

例えば、循環血症量低下を示唆する所見として尿中Cl<20mEq/Lです。これ1つで決定できるものでもありませんが、体液量の評価が困難なときに有用な可能性があります。尿検査のおススメ本を末尾に記載しておきます。

透析患者の救急対応

透析患者の対応を苦手とする医師が多い話は上述しました。

救急対応でも、どの臓器に重症な病態が起きやすいのか、どの疾患が多いのか、透析患者ならでは必要な対応はなにかを知っていることもアドバンテージになります。

透析患者は免疫不全のリスクですから、体温は測定体温より+1℃で考えた方がいいという考え方もあります。ですので、37.5℃の透析患者は、日透析患者でいう38.5℃と同等の可能性があります。38℃を超えてくる病態は重症疾患が隠れている可能性も高いです。こういったことを知っているかどうかもアドバンテージです。

静脈路確保・中心静脈カテーテル(CVC)挿入

私の勤務していた大学病院では、血液透析のシャント穿刺は医師の仕事でした。また透析患者は血管が細い人も多く、静脈路確保も難渋します。そういう症例の静脈路確保も多々経験してきております。またシャントがない血液透析患者は首や鼠径部の血管にカテーテルをいれて血液透析を行います。年間120例以上そういうケースがありましたので、内頚静脈にカテーテルを挿入する技術も当然上がります。

救急の現場で、重要な気道・呼吸・循環(ABC)のうち、循環を改善するのに静脈路(中心静脈含む)を確保は必要不可欠です。その確保をスピーディに行えるのはアドバンテージになります。

薬物中毒

薬物中毒の治療に血液浄化療法があります。もちろん血液浄化療法が無効な薬剤もあります。

有効な薬剤の中毒に対して血液浄化療法をやってきた経験がありますので、血液浄化できるかどうか、判断できるのも救急では役立ちます。

その他

循環に携わる薬剤(昇圧剤、降圧剤、利尿剤など)はよく使ってきているので、抵抗なく使用できます。

次に弱点を書き出します。あえて弱点と書いています。

救急へ転向の弱点(私見)

弱点

  1. 外傷診療
  2. 気管挿管
  3. 悪性腫瘍

外傷診療

内科医でしたので、外傷診療は経験が圧倒的にありません。

こちらは一から勉強です。

気管挿管

最近はNPPV(非侵襲的陽圧換気)の発展にもより、腎臓内科で気管挿管を要する症例は非常に少なかったのです。

救急では、気道・呼吸(AB)の改善のために気管挿管は必須のスキルです。挿管困難な症例でも確実に入れられる技術を身に着ける必要があります。

悪性腫瘍

腎臓・尿路系の悪性腫瘍は腎泌尿器外科が診療することが多いので、腎臓内科で悪性腫瘍を治療する経験は乏しいのです。

したがって、悪性腫瘍患者の緩和療法や化学療法を実施する機会はほぼないといってよく、どういう経過をたどるかとか、治療の合併症や副作用(薬剤性腎障害以外)がわからないことは弱点になります。

他にも弱点はあると思いますが、主だったものはこの3つになります。

医師も専門がある以上、専門以外には苦手な部分もありますが、1人で診療するわけではありません。得意分野で力を発揮しつつ、弱点は克服していきたいと考えています。

おススメ 尿検査の本


まとめ

本日お話した内容は以下の3つです。

  • 略歴
  • 腎臓内科を専攻にした理由
  • 救急転向の良かった点、弱点(私見)

次回もこの続きをお送りいたします。

では!

スポンサーサイト

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

じおーた

医師・投資家|専門を腎臓から救急に鞍替えした彷徨えるアラフォー. 投資、教育、勉強の記事を中心に書いてます. 「不易流行」変えるべきを変え、変えざるべきを変えず.

-救急医のリアル

© 2021 Powered by AFFINGER5