この記事で解決できる悩み
- なぜ目標提示は必要か?
- 明確な目標提示とは?
- シミュレーション教育での目標提示を知りたい
『学習者が実技に入る前になにも言わずに始めてませんか?』
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なぜ目標提示は必要か?
『人はなぜエベレストを登れるか?』
みなさんならどう答えますか。
「そこに山があるから。」と登山家が答えたのは有名な話ですね。
私の答えは「終わりがあるから」です。
つまり、頂上という終着点が「あらかじめ」設定され、しかも明確にされているから到達できるのです。
もし、ゴール(ここでいう目標)が隠されていたとしたら、たとえ標高599mの高尾山であっても、どこまで登りが続くのか見当がつかず脱落者が続出するはずです。
講習会の目標とは?
講習会では、必ず講習会全体としての大きな到達目標(頂上)が示されているはずです。

ICLSコースの目標は「突然の心停止に対する最初の10分間の適切なチーム蘇生を習得する」です。
指導者は、学習者がコースを終えたとき、「突然の心停止に対する最初の10分間の適切なチーム蘇生を習得」させなければなりません。
明確な目標提示とは?
ICLSコースの目標「突然の心停止に対する最初の10分間の適切なチーム蘇生を習得する」は誰に対しても明確ですよね?
指導者が学習者に語り始めるとき、常に「明確な目標提示」がなされるべきです。
講習会の朝一番の挨拶、ステーションの導入、学習者がスキル実践に入る前、学習者がシナリオを実践する前、いずれの時も、指導者は明確に目標を提示しましょう!
身近な目標
講習会の全体目標に到達するには、身近な目標を1つずつ順番にクリアしてくことです。
ICLSでも、各ステーションでの目標をクリアすることでコースの目標に到達します。
この身近な目標も「明確に」することで学習者は迷うことなく、順調に頂上(コースの目標)へ到達することができます。
具体例があったほうがわかりやすいですか?
目標の分割
「突然の心停止に対する最初の10分間の適切なチーム蘇生を習得する」ために、目標を分割してみます。
3つの目標
- 質の高いCPR(胸骨圧迫と人工呼吸)
- 心停止アルゴリズムの習得・実践
- 適切なチーム医療の実践
上述した3つの目標が達成できれば、ICLSコースの目標に到達できます。
なので、私はディレクターとして、始めのあいさつで学習者にICLSコースの目標を提示します。
次に、ICLSコースの目標に到達するために、質の高いCPR、心停止アルゴリズムの習得、適切なチーム医療の実践を意識して、1日コースに臨むよう伝えています。
3つに分割した目標のそれぞれ1つずつを達成させるために、さらに各々を分割してスキルステーションやシナリオステーションで目標を提示していきます(下図)。
明確な目標提示の例
質の高いCPRを例にとって考えましょう。
「質の高いCPRを学習者に習得してもらうために、どうやって明確に目標を提示しましょう?」
質の高いCPR
- 強く、早く胸骨圧迫を行う
- 胸壁は元の位置まで戻す
- 胸骨圧迫の中断時間を最小限にする
- 有効な換気(人工呼吸)を行う
- 過換気を避ける
学習者には、この5つをBLSステーションの最初に”はっきりと”伝えるべきです。
そのうえで、実技練習中に1つずつ目標を提示し、受講者の道しるべになるようにしましょう。
指導者が提示する目標のポイント
提示する目標のポイントは、目標を達成するために必要な要素がすべて自分でコントロールできるもので構成されていることです。
運に左右されたり、予測不可能な条件が入るような目標にならないようにシナリオなどを設定することは重要です。
目標を達成するための行動が、受講者のレベルと関係なくなってしまうからです。
受講者が失敗してもやり直しできる目標を設定しましょう。
そのためには、学習者にとって無理のない「手の届きそうな」かつ「具体的な」目標であることです。
例えば、胸骨圧迫が浅い学習者に対しては「次の胸骨圧迫のときはあと5mm深く押すのを目標にしましょう」という目標です。

目標を提示したのちの一連の流れは図に示す通りです。
学習者が目標達成できたら

指導者は、『学習者のよき伴走相手であるべき』です。
学習者が目標を達成できた時には、指導者は一緒に喜べる存在でありましょう!
まとめ
本日お話した内容は以下の3つです。
- なぜ目標提示は必要か?
- 明確な目標提示とはなにか?
- 指導者として行うべき目標提示:「明確な」「手が届きそうな」「具体的な」目標
以上になります。

では。
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