この記事で解決できる悩み
- 効果的に相手に物事を伝えたい
- 効果的な指導方法を知りたい
- 相手を満足させる物事の伝え方を知りたい
『自分が伝えたい内容、相手にちゃんと理解されていますか?』
本日の目次(タップすると飛ぶよ)
効果的に物事を伝えるために使う技法
自分が伝えたいことを、確実に伝えるためには言葉のキャッチボールが大事です。
自分がしゃべりたいことだけをしゃべっても、相手には伝わらないということです。
伝えることの評価は、伝えられた側(学習者)の理解度が、そのまま伝えた側(指導者)の評価となります。
教わる側(学習者)が学んでいないということは、指導者が教えていないということと同じです。
指導者の満足度≠学習者の満足度であって、指導者自身が納得いく指導をしても、学習者が学んでいなければ、学習者は満足できません。
そこで、指導者から学習者にしっかり伝えるための効果的な方法をお話していきます。
効果的な伝え方
- 起承転結やPREP法を用いる
- 相手の背景を確認する
- 相手の理解度を確認する
- 双方向性や参加体験型
- 非言語的コミュニケーション
伝え方(指導)の流れ
起承転結
解説
伝え方の流れとして「起承転結」を意識しましょう。
起承転結
- 相手の背景を確認
- 挨拶・自己紹介
- 導入
- 内容(本論)
- 質疑応答・まとめ
話を始める前に、相手の背景(立場や理解度、相手の知りたいことなど)を把握するために、いくつか質問をします。
話を始めるときはまず挨拶や自己紹介をしましょう。
ここからが話の本筋に入っていく”導入”です。
導入では、今から「何について」伝えるのかを明確にします。
そして、その説明を一通りします。
説明が終わったら、相手の理解度を探るため、質問がないかどうか?理解できたかどうか?を聞きます。
最後に、「何について」伝えたかをダメ押ししておしまいです。
強いて分類するなら、1~3が「起」、4で「承」と「転」、5が「結」ですね。
「起」と「結」では同じ内容を伝えるのが最重要ポイントです。

例:AEDを用いて
解説だけだとわかりにくいので、例を挙げます。
お題:AED
①相手の背景を探る
「AEDを知っていますか?」「AEDを使ったことありますか?」などの質問を投げかけます。
AEDはよく知っているし、何回もつかったことある人なら、AEDについて知りたいことがあるか追加質問してもよいでしょう。
AEDは知っているけど、トレーニングで1,2回触っただけの人なら、AEDの使い方を確認するのもありだと思います。
相手の職業や経験年数から推測するのもいいですよね。
医師でも研修医1年目を相手にするのと、医師10年目で救急専門医の先生を相手にするのでは相手のニーズや伝えるレベルが変わって当然です。
②挨拶・自己紹介をする
「こんにちは、じおーたと申します。」とか「おはようございます。〇〇病院××科のじおーたです。」とかですね。
こちらが自己紹介することで、相手にどんな人が説明してくれるのか、権威性や信頼性を担保できます。
③導入
「今からAEDの使い方についてお話します。」「今日はAEDの歴史についてお伝えします。」などです。
いまから何を伝えるのか、を明確にすると、相手は(あぁ、いまからAEDの使い方教えてくれるのか)とか(AEDの歴史なんておもしろそうだな)と思いながら聞くことができます。
しょっぱなに「何を伝えるのか」は明確にしましょう。

これは自分に与えられた時間によります。
2分しか持ち時間がなければ、とてもAEDについてすべてを伝えることはできませんよね?
1時間の持ち時間なら、「今日はAEDについて、歴史から使い方、値段、注意点まで詳しくお話します。」ということも可能です。
今回の例で時間設定はしていませんが、大きな話題であいまいにするのではなく、〇〇の××のように限定して話題を明確にしてほしかったので、”AEDの使い方”や”AEDの歴史”のような例にしました。
④内容(本論)
「AEDは手元に届いたら、必ず最初に電源を入れます。」
「電源を入れたら、患者の胸にパッドを貼ります。位置がわからないときはパッドの表面を見ると絵で描いてあることが多いです。」
「次にコネクターを差し込みます。」
「すると解析が始まるので、みんな患者から離れます。このとき、離れてください!と声をかけるとさらによいでしょう。」
「電気ショックが必要なら、音声で教えてくれますので、その音声指示に従います。」
「電気ショックをするときは必ず安全確認をしてください。自分を含め、患者以外の人が触れていないことを目で見て、声を出して確認します。」
「安全確認ができたら、電気ショックを実行します。」
「電気ショック後はすみやかに胸骨圧迫と人工呼吸を再開しましょう。パッドは貼ったままにしておきます。」
時間に合わせて、もっと詳細に説明したり、簡略化したりしてください。
⑤質疑応答・まとめ
「ここまででわからなかったことはありますか?」「何か質問はありますか?」
と問いかけることで相手の理解度を確認します。
質問があれば答えてから、なければそのまままとめに移ります。
「以上、AEDの使い方についてお話しました。」「AEDの使い方、理解してもらえましたね。」など
何を伝えたか、もう一度ダメ押ししてください。
PREP法
解説
PREP法は、以前に”講義・授業でわかりやすいスライドを作るコツ3つ”でもお話しました。
スライド作りも、プレゼンテーションも、ブログも、猫も杓子もPREP法ですね!
PREP法の説明はウィキペディアから引用します。
PREP法は主にビジネスシーンで用いられる文章構成方法であり、簡潔かつ説得力のある文章を作成する際に用いられる。
PREP法における「PREP」とは以下の
- P=Point(結論)
- R=Reason(理由)
- E=Example(事例、具体例)
- P=Point(結論を繰り返す)
の頭文字を取っている。最初に結論を伝え、次にその理由を説明、事例で理由を補強し、最後に結論を再度提示するストーリーを展開する。
PREP法の一番の特徴は結論を最初に述べることであるが、これは話の聞き手側の集中力が最も強いのが開始直後の30秒程度であることから、最も強調したい事柄を最初に話し、強く印象付けることで説得力のある文書やプレゼンテーションを構成することが出来るからである。また、冒頭に結論、つまり要点を持ってくることにより、何についての文書やプレゼンテーションなのかを聞き手側が把握しやすくなる。また、冒頭で内容をイメージ出来るかどうかでその後の内容の理解度も変わってくる。加えて、忙しいことが多いビジネスシーンでは結論を先に求められる場合が多いことからPREP法はビジネスシーンに適している。
出典:ウィキペディア
相手の理解度や技術の習得度を把握している場合はPREP法を用いるのも有効です。
上述した起承転結の3~5と同じです。

例
お題:AEDの使い方
P=Point(結論)
「今からAEDの使い方を学んでもらいます。」「AEDの使い方では迅速に使うことと安全に使うことを意識しましょう。」
R=Reason(理由)
「AEDは心肺停止患者で心拍再開させるのに、早ければ早いほど有効だから迅速に使いたいのです。」
「そして、AEDは電気ショックをすることで心拍再開を促しますが、裏を返せば心臓に電気を流すことで健常な人の心臓を止めてしまう可能性もあるのです。」
「だから安全に使用することも非常に大事です。」
E=Example(事例、具体例)
「実際にあった例でAEDの使い方を示します。」
「少し古い話になりますが、2005年に開催された愛・地球博での会場で、医学生の目の前で男性が1人倒れました。」
「心肺停止状態でしたが、会場内に設置されていたAEDを使って心拍再開、搬送された病院を退院して社会復帰できた事例があります。」
「目の前で倒れた人に対して、会場内に多数AEDが設置されていたこともあり迅速に電気ショックできたことが1人の命を救いました。」
「AEDを使うのも医学生で、トレーニングを積んでいたこともあったため、安全に使用できたこともよかった例です。」
P=Point(結論)
「AEDは迅速かつ安全に使いましょう。」
「AEDの使い方についてでした。」

相手の背景を確認する
学習者は「●●ができるようになりたい」など自分の欲求やニーズがあります。
「欲求やニーズの背景には、自己の必要性や他者からの要求が隠れていることもあります。
例えば、院内で心停止の急変事例が頻発したときに自分は動けなかった。
だから「心停止の対応を学ぶ必要がある」とか、「上司が組織的に対応する必要があるから、あなたに学んできてほしい」と大人の事情(要求)を受けて、「心停止の対応ができるようになりたい」ということです。
この欲求やニーズを満たす目標を指導者が設定するために、相手の背景を確認しましょう。
相手の理解度を確認する
伝えた内容を相手がどの程度理解したかを知ることは重要です。
話している途中や話し終えたときなど、どの程度理解しているかを確認しましょう。
「ここまでわかりましたか?」「最後に質問はありますか?」などの言葉をかけます。
学習者の理解度=指導者の評価 ですから、必ず相手の理解度は確認してください。
理解できていないとわかったら、もう一度伝えましょう。
双方向性と参加体験型
双方向性
会話での言葉のキャッチボールを指します。
伝える側が一方的にしゃべり続けるのではなく、相手の表情を見たり、理解度を確認する問いかけをしながら伝えましょう。
相手がけげんそうな顔をしながら「質問はないです。」と言って、さらに首を傾げたら、あなたは伝わったと思えますか?
話の途中で考え込むようなしぐさをするようなら、立ち止まって「ここまでわかりましたか?」などと挟んであげるのです。
相手から「〇〇がわからない」と言ってもらえれば、どこを重点的に伝えればいいかはっきりしますよね。
この言葉のキャッチボールこそが、伝えたいことをしっかり伝えるコツなのです。
参加体験型
伝えることは、なにも話をするだけではありません。
相手の五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)すべてに訴えかけるのです。
例えば、レモンの味を伝えるのに、言葉だけで伝えるよりも実際に味わってもらった方が明確に伝わりますよね?
最初のお題 AEDの使い方も、口で説明するだけよりも実際に使ってもらうほうが相手に伝わります。
「相手に体験してもらう」「聞くだけじゃなく、見てもらう、触ってもらう、においをかいでもらう、味を確かめてもらう」のように参加や体験をしてもらうことで伝えたいことがより明確に伝わります。

ただ体験してもらえることとしてもらえないことはあるんで、そこのところは考えてください。
例えば、気管挿管中の苦しさについて説明するときに、「実際に気管チューブを入れてあげますね」とはならないですよね?

上の図はNational Training Laboratoriesの学習ピラミッドモデルから出されたものです。
実際、学習定着率に関する研究では、”体験”させることが効果的な学習方法であると言われています。
話中心の指導は効果が低いので、実技中心、学習者に体験させたりグループディスカッションさせることを心がけてください。

非言語的コミュニケーション
コミュニケーションの手段には3つあります。
3つのコミュニケーション手段
- 言語的コミュニケーション:文字で表せる
- 準言語的コミュニケーション:声の大きさや高さ、話すスピード、間、声の抑揚
- 非言語的コミュニケーション:ジェスチャー、表情、位置関係など
自分の考えていることや思っていることを伝えるのはなにも言葉だけではありません。
表情やジェスチャーだって伝えることはできます。
実技が終わったあとに、上の写真のような笑顔でOKポーズをもらったら、「これでよかったんだな、うれし~♪」って思っちゃいますよね。
相手からの非言語的コミュニケーションの表出も忘れないでくださいね。

位置関係も大事です。
全員に話しているはずなのに、1人に近づきすぎると、残りの人は自分には話していないんだっていうメッセージが伝わってしまいます。
座っている相手に、自分が立って上からの目線で話すと相手は威圧されていると感じるかもしれません。
お互いに座って話すときでも、正面を向いて対面で座るのか、横並びで座るのか、90度の位置で座るのかでも伝わり方って変わっちゃいます。
自分とあなたの位置関係にも気を遣ってみてください。
以前の”フィードバック時の立ち位置と視線”でもお話しているので、参考にしてみてください。
効果的な伝え方のためのトレーニング
効果的な伝え方をインプットするだけでは、うまくならないのでアウトプットのトレーニングをしましょう。
トレーニング
- 「つまり一言でいうと・・・」を実践する
- 日常品の説明をする
- 聞き手が見ていない写真の説明をする
「つまり一言でいうと・・・」
あれも伝えたい、これも伝えたいとすごくたくさんの情報をしゃべってしまう人におすすめです。
日常会話のときに、最初の一言目を「つまり一言でいうと・・・」のうちの「・・・」の部分から話します。
日本語は結論が最後までわからないようにできている言語です。
したがって、日本語で考えると、前振りがあって結論がきます。
話すのが長い人は、前振りがすごーく長いのです。
ところがPREP法や起承転結でお伝えしたことは何でしたか?
”最初に結論を持ってくる”でしたね。
なので、常に「つまり一言でいうと・・・」の「・・・」を意識して日頃から話すようにしましょう。
日常品の説明をする
これは2人1組で行うトレーニングです。
えんぴつでも消しゴムでもなんでもいいので、2分間で相手に日常品の説明をします。
説明が終わったら、話し手が伝えたいことを、聞き手は伝わったことを紙に書きます。
お互いに紙を見せて、話し手が伝えたいことと聞き手に伝わったことが一致すれば、効果的な伝え方をしていることになります。
ポイントは上述した通り、時間が短いので、えんぴつのすべてを説明するのではなく、えんぴつの用途とかえんぴつの種類とか限定することです。
聞き手が見ていない写真の説明をする
聞き手が1人以上いればできます。
「日常品の説明をする」の難易度をさらに難しくしたトレーニングになります。
例えば、話し手にシンデレラ城の写真を見せます。
話し手は「シンデレラ城」とか「シンデレラ」、「城」という言葉を使わずに、聞き手にシンデレラ城の説明をします。
聞き手が、説明を受けて「シンデレラ城」とわかれば、うまく伝わっている証拠になります。
話し手が話す時間が短いほど、話す言葉が少ないほど効果的な伝え方をしていることになります。

まとめ
本日は、自分が相手に伝えたいことを効果的に伝える方法についてまとめました。
効果的な伝え方
- 起承転結やPREP法を用いる
- 相手の背景を確認する
- 相手の理解度を確認する
- 双方向性や参加体験型
- 非言語的コミュニケーション
効果的に伝えるのは、話をすることがすべてではありません。
構成を練った話と双方向性の会話、参加・体験してもらうことと非言語的コミュニケーションを駆使しましょう。

では。
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【第15回】シナリオ作成のコツ
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自分の表現方法をかぶくことで出す人もいたなぁ・・・。
前田慶次と奥村助左衛門が語り合わなくてもお互いの気持ちが通じるさまは、まさに効果的な伝え方を体現してますよ!