おはようございます、こんにちは、こんばんは。
じおーた(Twitter@JiotaQq8888)です。









地方と都会では、医局や大学病院の在り方は異なると思います。
地方の大学病院や医局で考えてもらうほうがしっくりするかもしれません。
前回の記事で、僕が辞めたのは新しいボスの考え方が大きかったわけですが、逆に大学病院や医局のメリットも「人」にあります。
”白い小塔”のメリットを、「人」というキーワードを意識して読んでください。
ということで、始めていきます。
本日の目次(タップすると飛ぶよ)
出典 日曜劇場『ブラックペアン』
人との出会いが自分を変える
【医師の経歴7】大学病院を辞める を読むと、大学病院で働くこと、医局に属することなんて良いこと本当にあるの?って思いますよね。
大学病院は人が多くいる、人の移り変わりも激しい、だからこそ人との出会いもたくさんあります。
そして医局という組織は、仲間意識も強く働くので困ったときに助けてもらえることも多くありました。
良くも悪くも、人との出会いは自分の未来に影響がでます。
大学での人との出会いがいい方向に作用する点をまとめます。
人との出会い(メリット)
- 自分では思ってもいなかった技術や資格を得た
- 自分の意志だけではこなせないであろう学会・論文発表
- 各種専門家(科)へのアクセスの良さ
- 若い世代への教育が知識の更新に役立つ
- 仲間意識からくる助け合いと援助
- 人脈という貴重な財産を得る
自分では思ってもいなかった道に・・・
地方の大学病院は医療の最前線としても最後の砦であり、最新の技術やシステムをいち早く導入したり、させられたりします。
最新の技術やシステムを導入するには、誰かがその役割を担わなければなりません。
医局の頂点は教授ですから、教授の考え(思い付きかも(失礼!))で「技術を習得してこい」とか「この資格を取れ」と言われます。
自分では「そんな技術を習得しに行くなんて」とか「こんな資格あったのか」と思うような道が開ける場合があります。
例えば、救急部に半年出向している間に、救急コース(ICLSやJPTEC、JATECなど)の受講もできたし、認定インストラクターになってしまったという例もあります。
緩和ケアチームに出向している間に、緩和ケア専門医の資格を取ったという例もあります。
自分の経験でも内科救急のコース(JMECC)が始まってしばらくしたころ、内科ではそんな話もなかったのに、
救急科の先生に「内科救急のコースあるみたいだぞ」の一言からJMECCがあることを知り、
今後、大学病院で年1回の開催が義務付けられそうということで、いち早く指導者の資格を取りに行った経緯があります。
大学院の研究テーマも自分では急性血液浄化で、と考えていましたが、教授の意向で『血圧』をテーマに研究しました。
これはこれで、自分にはない選択肢が増えましたし、結果的に全国学会のシンポジストになれたという恩恵にもあずかりました。
医師人生を長く歩んでいる先人たちが、今後の医療がどうなりそうか、今の医療のトピックは何かを考えたうえで、
自分では全く思いもよらなかった技術や資格の取得を勧めてくれること、これは大学病院や医局のメリットの1つです。
「結局、行きついた先が自分が進むべき道だった」と運命論者の私は考えちゃいます。
自分の意志だけではこなせない学会・論文発表
大学病院や医局は実績で評価される部分も大きいので、全国学会での発表や論文発表は重視されます。
他には、科研費に代表される研究費獲得も重視されます。
学会や研究費申請は毎年決められた時期に締め切りがやってきますが、大学病院や医局では発表や申請提出を義務付けられていることがほとんどと思います。
大学以外の医師でも、立派に学会活動や論文発表、研究費獲得の申請をしている人はいらっしゃると思いますが、
ついつい日頃の臨床を理由に学会発表も論文発表も研究もしていないという医師がほとんどではないでしょうか?
これらの煩わしいことでも、他人から締め切りを作られて義務化されると、あら不思議、不平不満を並べつつも締め切り前にはがんばります。
学会発表の抄録を提出してしまえば、(まれに不採用もあるかもしれませんが・・・)
スライド作り、当日の発表まで論文を調べたり読み込んだりと自分の血肉に変わっていきます。
論文まで作るとなると入念な論文を調べ読み込む作業に加え、ライティングの技術まで身につきます。
研究費獲得も、本当に獲得したら真剣に研究をやらざるを得なくなります。
他人に言われて始めたことが、実績として評価されるとうれしくなってまたがんばるというサイクルに入ることも珍しくありません。
私は研究費獲得までは至りませんでしたが、論文が採択されてPubMedに自分の論文が掲載されたときは本当にうれしかったです。
市中病院に移った今は、上司から厳しく催促されることもないので、学会も参加のみだったり、論文も書かなくなってしまいましたし、研究費獲得の申請書は書いておりません。
医局から義務化された学会発表や論文作成も、後から振り返ってみると短期間で飛躍的に経験を積め、知識や知見が増えたいい機会でした。

各種専門家(科)へのアクセスの良さ
大学病院は当然ながらほぼすべての科がそろっています。
自分が困ったときに専門科にアクセスしやすいのは当然のメリットです。
また医局という縦割り社会が存在しますので、よその医局に対してあんまり不遜な態度も取れませんし、取られません。
自分だけのお願いでは聞いてくれなくても、上司からよその医局に頼んでもらったらOKだったなんてこともあります。
自分の専門でない分野を専門科に直接話を聞いて、教えてもらって知識や技術を伸ばせるなんてすごい環境だと思いませんか?
もうひとつ、大学にいてよかったことに治験や臨床研究で助けてくれる専門家がたくさんいたことです。
治験って患者さんへの説明だけじゃなく、プロトコルの確認や予定をこなすのも大変なんですよね。
そういったとき治験コーディネーターがサポートしてくれたのは大きかったです。
また論文発表に際して、データクリーニングや統計に関することも専門家へアクセスしやすくて助かりました。
漏れなくデータを取るコツとか、研究計画の段階で使う統計のアドバイスもらえるとか、本当に大きいですよ。
大学を去る直前には、論文の英語のcheckや添削も受けられるようになっていました。
いずれに関しても、資金は医局から支払ってもらえますし、医局に属しているからこそ融通を聞かせてくれた面もあったと思っています。
普段の臨床だけでなく、学術的な面をサポートしてくれる制度や人がいるのは、大学以外では限られた病院だけでしょう。
独学で勉強するには限界がありますが、専門家から耳学問でたくさんのことを吸収できるいい環境なんですよね!

若い世代への教育が知識の更新に役立つ
大学の教官になると、学生への講義はつきものです。
毎年、学生への講義を担当すると、少なくとも担当部分に関しては強制的に知識をup dateもしくはup gradeさせなければなりません。
学生への講義でウソはつけないですし、最新の知見に関しても触れるべきだと考えていますからね。
「人に教える」のに、自分の知識も最新のものに更新していかなければ聞く側は受け入れてくれません。
アウトプットすることでインプットも磨かれていく、しかも毎年強制的にup gradeされる、いい機会ととらえることもできますね。
仲間意識からの助け合いと援助
日本のことわざに「同じ釜の飯を食う」というのがありますが、医局も同じです。
苦楽を分かち合う存在なので、自分が困ったときに助けてもらったことは多々あります。
行き詰った論文を手直しして採択まで導いてくれた先輩、臨床的に困ったときに助けてくれた同僚、異動先でも面倒を見てもらえる安心感は
医局で感じることのできるものでした。
また研究での資金繰りや書類の取りまとめなど医局秘書さんに助けられましたし、学会活動での補助も医局から出してもらいました。
他施設共同研究も医局を通じて協力してもらい、国際学会や論文として成果にできました。
このように人材的にも経済的にも援助してもらえるのは医局のメリットの1つです。
「人脈」という財産
大学病院や医局の最大のメリットは「人脈」と言っても過言ではないでしょう。
冒頭でお話した通り、大学は人の入れ替わりが激しいです。
人が100人いれば、100通りの考え方があります。
色々な人と接する=いろいろな考え方に触れる です。
色々な考え方に触れると、自分にもいろいろな変化がもたらされます。
いい変化をもたらせるよう取捨選択できれば、人の入れ替わりが激しい大学や医局はメリットになります。
研修医時代から専門医・医学博士になるまで色々な指導医に指導してもらいました。
臨床で困ったとき、他科も含め色々な医師に相談したり、
看護師や検査技師、臨床工学技士といった医療従事者に助け合うことで貴重な「人脈」を構築できました。
救急コースで他大学、他病院のスタッフと接し、知り合いになり、仲良くなったのも人脈を広げるのに役立ちました。
救急コースに快く送り出してくれていた医局があってこそ、でもあります。
大学病院や医局のデメリット
ここまで良いことばかり書いてきたので、「本当にそう思ってるのか?」という心の声が聞こえてきそうです(笑)。
悪い噂の方が早く広まるし、negativeな内容は心にとどまりやすいので、医局に入る前の研修医や医学生からは医局のイメージは最悪に映るんだと思います。
しかし、医局にもいい点はありましたし、嘘偽りのない気持ちで、今回の記事を書いています。
と同時に、もちろん短所もあります。
医局の短所
- 自分の意向は無視されがち
- 仕事が多くて時間がない
- モンスター上司
自分の意向は無視されがち
組織が大きいので、自分の意見を主張できる立場に行くまでは自分の意見は無視されます。
自分の意見が通らないことにストレスを感じるタイプだと、大学や医局は苦痛でしかないかもしれません。
これに関してはがんばって実績を残すことで徐々に変わっていくので、完全に無視されるわけではないと信じるしかないと思っています。
ただやはりある程度の我慢は強いられるでしょうね。
忍耐力を身につけるトレーニングだったと今は笑って言えますが。
仕事が多くて時間がない
上述したいい点の内容を全部こなしていたら、そりゃ時間ないよって思いませんでしたか?
当初は私も降ってくる仕事をなんとかすべてこなしていました。
うまく仕事を回すように、時間効率を重視してこなしていました。
こうなると、さらに多くの仕事が降ってきます。
次にしたことは、やらない仕事を決めました。
自分がやらなくてもそのまま終わった仕事、他人に振ることで終わって言った仕事・・・。
ここで伝えたいことは、確かに仕事が多くて時間がないのですが、効率的に仕事を回す方法とやらない仕事を見極める力が身についたことです。
モンスター上司
誰かが言いました。「上司は選べるけど、部下は選べない」
部下(後輩)は自分の意思と関係なく入局してくるので、選ぶことはできません。
上司は別です。
自分が入局するところは自分で選択できるので、上司をだれにするかも選択できます。
したがって上司選びは非常に重要です。
自分の成長機会を得られるかどうかは上司によるところも大きいからです。
今回の私のように上司が代わって残念なことになるように、自分のことしか考えないボス(モンスター上司)の下につくと暗い未来が待っていますね。

を地で行く上司・・・想像するだけで・・・涙で前が見えません。
「半沢直樹」は本当に面白かったですよね。
モンスター上司を避けるためには入局の時に教授を見極める必要があります。
直属の上司が急に交代して悲劇に見舞われたときは、とっとと逃げ出せるように、もしくは対抗できるだけの腕や資格を磨いておきましょう!
大丈夫、その腕は医局でがんばっていればおのずと手に入れられるはずですから。
大学病院から解放されると・・・
大学病院を辞めると、締め切りに追われていた日々から解放されます。
学会発表も、論文作成も、研究費申請も、上司から口うるさく言われることがほぼなくなります。
この状況で自分の意志だけで自分を律することのできる人、どれぐらいいるのでしょうか?
講義の機会もほぼなくなります。
知識のup dateも自ら学会に赴いて獲得しなければなりません。
指導してくれる上司や相談に乗ってくれる同僚も必ずいるとは限らないので、大学に赴くか、
今まで獲得した自分の知識や技術でなんとか乗り切ろうとしてしまう人も多いんじゃないでしょうか?
楽を覚えると、自分で自分を律することは非常に難しくなります。
自分の意志だけでなく、他人からの強制力も時として有効なこともあるのです。
だからこそこの言葉をあなたに贈りたい。
「医局が自分を使うなら、自分は医局を使い倒せ!使って使って使いまくれ!」
まとめ
大学病院や医局に属することのメリットについてまとめました。
一芸に秀でた人がたくさんいて、色々な考えに触れるうち、自分では思っても見なかった道が拓け、想像できないほどの景色が広がります。
そしてなにより、「人脈」という財産を手に入れることができます。
結局のところ、大学病院や医局での仕事をポジティブにとらえるか、ネガティブにとらえるかで変わってくるのではないでしょうか?
私自身は、今の自分の力は大学病院や医局に授けてもらったもの、そう思っています。
では。
