この記事の対象者
- カルテの書き方を知りたい医学生
- 電子カルテのダメな例を知りたい医学生
- 研修医以降も使えるカルテの書き方を練習したい医学生
おはようございます、こんにちは、こんばんは。
じおーた(Twitter@JiotaQq8888)です。




医師人生が長くなると、色々な医師のカルテを読むことになります。
「これが書いてあったらわかりやすい!」というのは人によって異なりますが、「こんなカルテはわかりにくい」というのはハッキリしています。
今日はわかりやすいカルテの書き方に加えて、こんなカルテはわかりにくい、という話も挙げていきたいと思います。
当たり前すぎて書くのもはばかられたんですが、『正しい日本語で書く』のが読みやすいカルテになることはもちろんのことですよ!
ちなみに、偉そうに書いてますが、
研修医のときに診療情報提供書の1文目の定型文すら直されて原型どころか、僕の書いた字はどこ?ってなった人、私です!
退院サマリも全く要約されてないって指導医から指導された人、私です!
そんな私でもここまでたどり着くことができました!
あなたが遠回りしないように、ぜひ参考にしてくださいね。

カルテの工夫
- 主観的意見と客観的事実をはっきり分ける
- 「結論→根拠→鑑別・除外診断が必要な疾患」の順で記載する
- 根拠は陽性所見だけでなく、陰性所見も書く
ということで始めます。
※カルテは患者さん本人に帰属するものであるという前提もふまえてこの記事を記載しております。
本日の目次(タップすると飛ぶよ)
カルテとは
法律上の義務
医師法第24条1項に「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」と定められています。
つまりカルテの作成は義務です。
カルテの役割
カルテは、「実臨床で非常に大きな役割を担う記録」という役割を担っています。
具体的には、現在までの患者の状態や提供されてきた医療行為、および診療した医師の考察の経緯が記録されています。
他には、保険請求の根拠となるもの、医学教育の資料としての役割もあります。
カルテの役割で大事なことは「だれが読んでも自分の考えが伝わる」ことです。

代表的な書き方
現在、カルテの代表的な書き方は問題指向型医療記録「PORM (Problem Oriented Medical Record」です。
俗にいう「SOAP」形式ですね。
S(Subject):患者の主観的なデータ。病歴や患者の訴えなど
O(Object):患者の客観的なデータ。身体診察所見や検査結果など
A(Assessment):記載者の考察・評価など
P(Plan):検査計画や治療方針など
SOAP形式でのカルテ記載に慣れていきましょう!
カルテの工夫

主観的意見と客観的事実をはっきり分ける
原則
カルテには、初診時カルテと日々のカルテ、2パターンありますよね。
どちらのパターンもAssessmentとPlan、この2つだけがあなたの主観的意見を書く項目です。
初診時カルテでは主訴、現病歴(既往歴や家族歴、嗜好歴、社会歴含む)、初診時初見(身体診察所見や検査所見)までは、客観的事実だけを書きます。
日々のカルテでは、SubjectとObjectには客観的事実だけを書きます。
自分の考察や今後の方針はあなたの主観的意見なので、AssessmentとPlanに書きましょう。
注意点
O:Objectでよくみられるのですが、検査結果を記載した(貼り付けた)後に自分の考えを記載しているカルテがあります。
例えば、「Cr高値はおそらく急性腎障害を合併している」とOで記載している場合です。
「Cr高値」は客観的事実ですが、「おそらく急性腎障害を合併している」は主観的意見です。
Oの項目には身体診察の所見、検査結果、生理検査や画像検査の所見だけを記載しましょう!
「結論→根拠→鑑別・除外診断が必要な疾患」の順で記載する
A:Assessmentの記載で最も意識してほしいことが、「結論→根拠→鑑別・除外診断が必要な疾患」の順で記載することです。
「#1」「#2」「#3」・・・と各プロブレム毎に考察を記載することになると思います。
このとき、一行目は『現時点で自分が最も考えている疾患』を記載しましょう!
二行目以降で、『なぜ自分が一番にその疾患を考えているのかの根拠』を書きます。
根拠を書き終えたら、現時点で自分が鑑別診断に挙げている疾患や除外診断しなければいけない疾患を記載しておきます。
根拠は陽性所見だけでなく、陰性所見も書く
陽性所見だけを集めて、根拠としているカルテを多数見かけます。
疾患には、特定の所見がないことでその疾患の診断につながることもありますので、陰性所見も根拠として記載しましょう。
例えば、SLEでは発熱するけれども、CRPは上昇しません。
SLEの場合、CRPが陰性であることが、SLEの診断の根拠として有用になるのです。
ですから、陰性所見も根拠として使えることを覚えておきましょう!
Assessment記載の例
わかりやすいカルテの工夫を用いて記載したAssessmentの例になります。
上の記載例を読むと、記載した医師は若年女性の不明熱症例に対して、1番に感染性心内膜炎を考えていることは明らかです。
そしてSLEも感染性心内膜炎と同じくらい可能性があると考えていることも読み取れますよね。
さらに言うと、検査結果を待たずに治療を開始しながら、診断確定に必要な検査結果を待つことを意思表示されています。
おそらく今後、経食道心エコーで疣贅を探しにいく、血液培養陰性でIEが否定されたら腎生検するなどのP:Planが記載されると思われます。
内科学は診断学と言われ、診断を確定させるのが仕事ですから、プロブレムが症候になることがほとんどです。
したがって、記載例のように自分の意図が明確に伝わるように記載できることが望ましいです。
診断がついている場合は・・・
すでに確定診断がついている場合は、プロブレム自体が#(診断名)となりますが、この場合は一言で患者の状態を表してください。
#感染性心内膜炎(レンサ球菌)
6/2~セフトリアキソン2g/dayで加療中、解熱しており状態は安定。
#微小変化型ネフローゼ症候群
PSL 50mg/day内服中、乏尿が持続しており肺水腫に注意。
上のように記載すると、当直医やその他の医療スタッフも1行読むだけで患者の状態がわかります。
状態悪化が予想される場合は、その対応まで記載しておけば、自分以外の医師も判断に迷わず対応できます。
そのため、次の行に「〇〇になったら、××する」と記載しておきましょう。
#微小変化型ネフローゼ症候群
PSL 50mg/day内服中、乏尿が持続しており肺水腫に注意。
乏尿の持続に対してはアルブミン+フロセミドで対応中。
肺水腫によるSpO2低下があれば、緊急血液透析で除水予定(同意書取得済)。

わかりにくいカルテ
わかりにくいカルテの特徴をあげておきます。
わかりにくいカルテ
- とにかく長い
- 医学用語で書かれていない(患者さんの言葉をそのまま書いているだけ)
- 記載した本人が何を考えているか読み取れない
『あなたはカルテで意味がわからなくて長い文章、読みたいですか?』
とにかく長い
救急外来であと5分で救急車が搬送されてくるとき、ものすごーく長いカルテ読めると思いますか?
絶対、読めませんよね。
読んでいる途中で救急車が来て、結局患者さんから大まかに話を聞こうとするけど、患者さんもあまり理解してなくて・・・トホホ・・・なんてこと、少なくないんです。
ですから、カルテは可能な限り1行でも少なく、1文字でも少なく、まとめましょう。
医学用語で書かれていない
カルテ記載初心者がやってしまいがちな間違いとして、「現病歴やSに患者さんの言われた言葉をそのまま記載してしまう」が挙げられます。
例えば、胃のあたりの痛み→心窩部痛、胸がぎゅっと締め付けられ→前胸部圧迫感 などです。
すべてが置き換えられるわけではありませんが、可能なかぎり医学用語に変換して記載しましょう。
読み手もイメージがつきやすくなりますし、カルテも短くなります。
記載した本人が何を考えているか読み取れない
A:Assessmentの記載でみられるのが、「記載した本人が何を考えているか読み取れない」です。
例えば、胃の当たりがどーんとする65歳男性のA:Assessmentです。
#胃のあたりの痛み
食事とはあまり関係がない痛み。筋性防御はなく、緊急性は低い。とりあえず採血、腹部CT。
このカルテからどんな疾患を想定しているか、わかりますか?
CTの必要性や血液検査で何を調べたいのか、もわかりませんね。
AssessmentとPlanでは自分の考えを明確に述べましょう!
なぜ長くなるか
これは電子カルテになったことが要因だと考えています。
手書きなら、「少しでも短くしたい」と思うのが人というものです。
電子カルテはコピー&ペーストして、新しく起きたことを追記できます。
追記、追記で記載していくと、あっという間に何十行という長編大作カルテの完成です。
また、担当医が複数いると、同じ内容なのに1日に3人も4人もコピー&ペーストで同じ記載が続きます。

カルテを長くしないための「対策」
対策
- 前日のAssessmentをコピー&ペーストして、追記しない
- 時々、経過を要約する
具体例でお示しします。
このように毎日、追記していくと、カルテはどんどん長くなり、「どこからが新しい情報なのか、現在の状態はどうなのか」非常にわかりにくい!
短期間で退院する患者さんはいいですが、1か月以上の入院患者になるとだれにも読まれないカルテの完成です。
どうしても経過を記載したいのならば、先に新しい情報や現在の状態を記載してから、1行あけて【今までの経過】の下に経過をコピー&ペーストしましょう。
私であればこのように記載するという一例も挙げておきます。
前日の記載後から本日の記載前までの内容を最初に書いておけば、ぐっとわかりやすくなります!
下の5行は経過を要約したものになります。

コラム~Weekly summaryを書こう~
コラム
私は内科医時代、毎週欠かさず金曜日に担当患者さんそれぞれのカルテにWeekly summaryを記載していました。
Weekly summaryのメリットは3つありました。
- 1週間の出来事を振り返ることで患者の状態を再把握できる
- 週明けまでの休日になにかあっても、当直医が対応しやすい
- Weekly summaryをつなげば退院サマリーが作成できる
毎週Weekly summaryを書けば、間違いなく要約力は向上します!
注意することは、カルテ記載と同じです。
- 入院から先々週までの経過を1行目に要約して記載する
- 先週のWeekly summaryに継ぎ足さない
- 週末の対応と来週の予定を書いておく
『要約力があって損することはありません!』、将来の学会発表や論文作成につながるので毎週書いて要約力を磨きましょう。

スタッフはカルテから何を知りたいか?
結論から言うと、看護師をはじめとした医療スタッフが知りたいのは「あなたの考えと方針」です。
記載している医師の「どうやって」と「なぜ」、英語で言うと"how”と”why"を知りたいのです。
この患者さんに対して、どうやって(どういう日程で)
- 検査を進めていくのか
- 治療を行っていくのか
- 効果を判定するのはいつか
- 転院や退院の日時、転院先、退院先は決めるのか(決まるのか)
この患者さんに対して、なぜ
- この疾患を考えているのか
- これらの検査を行うのか
- この治療法を選択したのか
医師の考えや方針が伝われば、看護師さんも臨床工学技士さんも検査技師さんもソーシャルワーカーさんも理学療法士さんも、先回りしてスムーズにいくように仕事を進められます。
検査でも治療でもどんな所見を探しに行けばいいのか、なんの副作用や合併症に気をつければいいのか、わかりやすいですよね。
スタッフ全員が知りたい内容を、誰が読んでも伝わるように、あなたの考えとして書く。
これができれば、わかりやすいカルテになること間違いなしです。
まとめ
本日はわかりやすいカルテのための工夫とわかりにくいカルテの特徴についてお話しました。
- 前提条件として、「読みやすい日本語」で書く
- 「だれが読んでも自分の考えが伝わる」ように書く
- 1行でも、1文字でも少なく書く
以上3点を意識して書いてみましょう。

では。

さいごに:同級生よりできレジになりたいあなたへ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事に興味があるあなたはきっとできるドクターやできるレジデント(できレジ)になりたいと思っているんじゃないですか?
できレジになりたいあなたには「医師になったら実際にこんな診療が役に立つんだ~」という日常診療のノウハウがつまった勉強会が役立つことでしょう。

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