この記事が参考になる人
- 他科志望の研修医が研修に来たけどやる気がなくて困っている指導医
- 他科志望の研修医だと教育のモチベーションが上がらない指導医
- 他科志望の研修医が自分の診療科を研修中になんて声を掛けたらいいかわからない指導医
おはようございます、こんにちは、こんばんは。
じおーた(Twitter@JiotaQq8888)です。
指導医をしていると、他科志望の初期研修医が自分の診療科で研修に回ってきて教育に手を焼くことありませんか?
2022年度現在、私は大学で教育に比重を置いた仕事をしており、指導医のための講習会でファシリテーターを務める機会も多くあります。
そういった講習会でよく耳にする声が「他科志望の研修医に対する対応が難しい」というものです。
「他科志望だから自分の診療科には興味がない」って言われたり、口には出さないけど態度ではやる気ないのが見え見えだったり、を経験する指導医は多いでしょう。
変に熱血指導してうっとうしがられるよりは、研修医を放置してお互い嫌な思いをせずに1か月間過ごせばいいや、って考えたくなる時もあったりしますよね。
ただこの放置プレー、将来のことを考えると指導医にとっても研修医にとっても非常に損をしているんです。
損をしないように、いやそれ以上に指導医・研修医双方に大きなメリットを生み出すために次の3つの視点で見てはいかがでしょうか?
指導医が持っておきたい3つの視点
- 研修医の志望科と指導医の診療科のつながりを考える
- 「研修医が病棟にいないのは仕事がないから」を知る
- 指導医の視点を未来志向で考える
この3つの視点を持つと、なぜ他科志望の研修医が回ってきても最低限の研修を受けさせる内容がわかるのかを詳しく書いていきます。
指導医としてこの内容を研修させておけば、将来、指導医にとっても、研修医にとっても、患者にとってもよい医療が提供されるようになるでしょう。
ということで始めます。
本日の目次(タップすると飛ぶよ)
指導医の教育がもたらすメリットを最も享受するのは指導医
あなたの研修医に対する教育で最も得をするのは、実は指導医であるあなたです。
あなたの指導で研修医が優秀な医師に育てば、優秀な医師を仲間(ひょっとしたら部下)にできるでしょう。
そうなれば、優秀な医師仲間があなたの仕事の負担を減らしてくれるかもしれないし、負ってくれるかもしれません。
逆に優秀でない医師ばかりになってしまうと、いつまでたっても指導医であるあなたの負担は減らないどころか増え続けるばかりです。
もし研修医が育ててくれる恩義を感じてくれれば(期待してはいけませんが)、指導医であるあなたの頼みは聞いてくれる可能性が高いと思いませんか?
「返報性の法則」という法則があって、人は受けた恩義は返したくなるというものです。
したがって、指導医であるあなたの日々の教育の積み重ねがいずれ将来大きなメリットとなってあなたに返ってくると信じましょう!
そこで、冒頭にお話した3つの視点を持ち、それをどのように活用するのか具体的に書いていきます。
指導医が持っておきたい3つの視点
- 研修医の志望科と指導医の診療科のつながりを考える
- 「研修医が病棟にいないのは仕事がないから」を知る
- 指導医の視点を未来志向で考える
視点1:研修医と志望科と指導医の診療科のつながりを考える
研修医が志望する科と指導医であるあなたの診療科の共通点からつながりを持っていきましょう。
人は共通点があると親しみやすくなる性質があるからです。
私は腎臓内科を専門としているので、研修医の志望科で良く使われる薬剤の薬剤性腎障害の話題から入ったりしています。
”血清Cr値や検尿異常でどうなったら腎臓内科に紹介してほしいか”もminimum requirementとして伝えています。
このように指導医であるあなたの診療科によくコンサルトされる事例やどんな時にすぐ相談してほしいかを研修医にしっかり教えておくことで、紹介されるときにはすでに手遅れといった将来の事例を減らすことができるでしょう。
早め早めに相談してくれると、指導医であるあなたの負担は確実に減るでしょう。
さらに研修医に余裕があれば、研修医の志望科でよく起こる症例(指導医の診療科に相談するか迷うような症例)の初期対応も叩き込んでおくとより一層楽になることは明白ですね。
ちなみに腎臓内科で外来としていた時に最も他科依頼されなかったのは乳腺外科でした。
視点2:「研修医が病棟にいないのは仕事がないから」を知る
指導医であるあなたは、研修医を病棟で見かけない時、「研修医、病棟にいないなぁ。どこにいるんだろう?」こんな風に思ったことはありませんか?
安心してください、研修医は研修医室でゴロゴロしながらスマホをいじったり、優雅にお昼寝していたりします。
もちろん、まじめに病棟に来て研修している研修医もいますが、そういう熱心な研修医は他科志望であっても指導医のあなたは困ることはないでしょう。
さて話を戻して、研修医室でスマホをいじりながらゴロゴロしていたり、お昼寝している研修医を自分に置き換えて考えてみてください。
どんな時にそういった行動を取るのでしょうか?
それは、”就業時間なので帰宅はできないけど暇なとき”です。
研修医が遊んでいるのは暇だからであってサボりたいからではありません(と信じたいです笑)。
あなたも帰れないけど時間を持て余しているときは自分のデスクで寝たり、スマホをいじったり、ネットサーフィンしたりしていませんか?
それと同じです。
研修医に病棟に来てほしかったら、来る理由を作ってあげましょう!
そうです、病棟に来なければできない仕事を任せればいいのです。
人は頼られると幸せに感じる生き物ですから、その性質も利用して仕事を任せましょう。
任された仕事をきっちりこなせば、研修医の成長にもつながるし、責任感を植え付けることもできます。
視点3:未来志向で考える
ただでさえ臨床で忙しい指導医のあなたが教育、しかも自分の診療科に興味がない研修医に教育をするのはめんどくさいと感じるのも無理はないでしょう。
そんなあなたに今だけどみるのではなく、未来も見る視点を追加してもらえないでしょうか?
いま、少しの労力を割いて研修医に教育してみると少なくとも2つのメリットがあります。
2つのメリット
- 他科に信頼できる医師のつてができる
- 他科に通院中の患者の紹介やリクルートに役立つ
指導医の先生なら実感すると思いますが、自分の診療科以外のことって実は研修医の方が知っていたりしませんか?
それを考えると自分の専門外のことは、3年目の若手であっても他科の医師の方が詳しいのが普通です。
優秀な医師が知り合いで、さらに自分の教え子となればそれはもう非常に心強い味方になることは明らかですよね。

また、視点1でお伝えした指導医の診療科で必ず知っておいてほしい知識を伝えておけば、患者を紹介する適応やタイミングも適切にしてくれるでしょう。
外来で「なんでこんな状態になるまで放っておいて紹介してくるんだ」とか「なんでこんな軽症で紹介してきたんだ」とイライラする場面が減ってくれるでしょう。
結論として、今だけを見るのではなく将来の自分のストレスを減らす未来を見ましょう。
コラム:CKDの紹介タイミングが遅いのは啓蒙活動不足が原因!?
コラム
腎臓内科医としては、蛋白尿が持続して認められる、血清Crが1.0を超える場合はやめに紹介してほしいと考えております。
慢性腎臓病(CKD)の概念を打ち出す前は、蛋白尿が出ていてもそのまま放置されたり、Crが2.0を超えてから紹介されたりというケースが多々ありました。
CKDの定義を①尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか-特にたんぱく尿の存在が重要ー②GFR<60mL/分/1.73m^2で①,②のいずれか、又は両方が3か月以上持続する としてから紹介する適応、タイミングがはっきりし腎臓専門医への紹介率が上がったとされています。
このことから腎臓内科医の間では、紹介してほしい患者と紹介してもらうタイミングがよくなかったのは啓蒙活動が足りなかったからだと反省したと言われております。
そこで、私は他科にいってしまう研修医であっても
- 定期通院する患者は1年に1回検尿もする
- 蛋白尿が認められたら再検して、2回目も蛋白尿があったら腎臓内科に紹介する
- eGFRが60を切ったら必ず腎臓内科に紹介する
の3点はかならず伝えるようになりました。
もし、あなたの外来に紹介してくる患者のタイミングが遅すぎるなら、それは若手医師への啓蒙活動が足りなかったかもしれません。
外来でイライラせずに自分の専門領域の診療を心地よく行うには、他科志望の研修医への教育は欠かせないと思えませんか?
まとめ
本日は、「他科志望の研修医に対する対応が難しい」という悩みにお答えしてみました。
3つの視点を持つことで、将来の自分のストレスを減らす道を選択してはいかがでしょうか?
視点①:研修医の志望科と指導医の診療科のつながりを考える
→研修医がそのまま志望科の医師になったとして、自分の診療科と関わりを持つケースに関して覚えておいてほしいことを伝えましょう。
視点②:「研修医が病棟にいないのは暇だから」を知る
→研修医も仕事を任されたり、自分が成長できると思えばちゃんと責任をもって仕事をしに病棟にやってくるでしょう。
視点③:未来志向で考える
→視点①、②の内容を実行することで他科に信頼できる後輩医師のつてを作りましょう。
これらを試してみても”生理的に合わない”などのケースもありうると思います。
そういった場合は、診療科全体で指導医と研修医の組み合わせを変えてみるのも一手ではないでしょうか。

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